大塩あゆみ流、「違和感」からの発見!やりたい仕事の見つけ方と楽しく続けるコツとは(8/31(木)meet up Lab Vol.3より)
伊豆で生まれ育って、料理本を2冊も出すほど人気になった料理研究家のあゆみさん。4年前からは諏訪で食堂をはじめ、地元の方にも遠方の方にも老若男女に愛されるお店に。そんなあゆみさんに、今回はこれまであまり語ることのなかった、子供の頃から感じていたこと、初めての職場やケータリング時代の疑問、今の世の中の働き方に対する違和感など、「違和感」をテーマにあゆみさん流の仕事との向き合い方を語っていただきました。
幼少期の違和感―なぜ自分は周りとは違うのか
あゆみさんのご実家は、静岡県で旅館を経営しており、幼少期よりご家族以外のお客様が常に居るという特殊な環境で生活していました。ご両親は旅館のお仕事に追われ、忙しい仕事の合間に授業参観に来てくれるものの授業が終わるとすぐに仕事に戻ってしまい、授業参観後に親子一緒に寄り道して帰っているクラスメイトがとても羨ましかったそうです。
また、あゆみさんは幼少期にアトピーを患っており、人とは違う家庭環境や自分の体質に違和感を覚え「なぜ自分は周りとは違うのか」、「仲間外れにされないようにするにはどうしたらいいのか」ということを常に考えるようになりました。この時のあゆみさんは、「みんなと違うことが嫌」という思いがあったものの、忙しい両親の前では口にすることはなかったそうです。
今のあゆみさんからは想像もつかないような意外な幼少期の話に驚かれた方も少なくはないと思います。そんな幼少期から、「あゆみ食堂」を立ち上げるまでにどんな違和感があゆみさんを変化させていったのでしょうか。
「違和感」からの気付きー相手を考える姿勢が結果につながり、自分の自信にもなる
あゆみさんが初めて就職した先は、料理に関する仕事ではなく、意外にもアパレル業でした。
学生時代からファッションに興味があり、文化服装学院へ入学、卒業後はアパレル販売業の道へ進みました。しかし、そこであゆみさんは働く中で「違和感」に出会います。
元々はファッションデザイナーになりたいと考えていたそうですが、デザイナーまでの道のりは長く、なかなかモチベーションが上がらないまま就職しました。そんな中、上司の働き方に疑問を抱き始めました。上司は売上げを上げていたものの、ただ高い商品を売りつけるだけで本当にお客様のためになっているのか、果たしてその売り方は会社のためになっているのかと違和感を覚えたそうです。
違和感を抱きながらこのまま仕事を続けるべきか悩んでいましたが、幼少期より「自分で始めたことを中途半端に辞めるな」と教育されていたあゆみさんは、「上司と違うアプローチで売上げを上げて、上司の実績を超えたら辞めよう」と考えました。
あゆみさんは、ただ高い商品を売りつけるのではなく、お客様のライフスタイルや予算を考慮し今一番お客様にとって必要な商品を提案し続けた結果、見事上司の売上を抜きその後退職しました。
この経験からあゆみさんは、「どの仕事においても、相手のこと考えるという姿勢が結果に繋がるし自分の行動に自信を持って働けると気付いた」と語ってくださいました。
「本当にこれが自分のやりたかったことなのか?」があゆみ食堂につながった
アパレル業を退職後、あゆみさんは母親と一緒に精進料理のお店に行き植物性・野菜中心の料理に興味を持ちます。
当時お世話になっていた精進料理の先生から〈エジプト塩〉が人気の料理家・たかはしよしこさんを紹介してもらい、たかはしよしこさんの調理補助をすることになりました。
たかはしよしこさんの調理補助をする中で、四季折々の野菜の変化や、味わい、料理のプロセスの楽しさに気づき、あゆみさん自身でケータリングの仕事を始めました。ケータリングは依頼された分量、場所で料理を提供するためフードロスが少なく、お店を構える必要もない為始めやすかったものの、ここでもあゆみさんはある「違和感」に気づきます。
元々あゆみさんは、精進料理をきっかけに野菜の変化や味わい、魅力を引き出す料理の楽しさを知ったにも関わらず、実際のケータリングでは顧客の指示の下、限られた食材の中でしか料理ができない事に「本当に今やっていることが自分のやりたかったことなのか」と、疑問に思ったそうです。
自分が本当にやりたいことは何か、考えている時に知人に依頼され週に一度、知人の事務所に赴いて食事を提供する仕事をすることになりました。そこでの料理はあゆみさんが本当に提供したい、旬の食材を使用したできたての料理を提供することができました。
この経験からあゆみさんは、依頼された料理を作り続けるのではなく、日常的に食べられる食事を通して、“食”を囲んで人々がコミュニケーションをとれるような場所を作りたいという思いから、今の“あゆみ食堂”を立ち上げることを決意します。
「やりたい仕事は続くから」の一言でお金を優先するのを辞めた
“あゆみ食堂”を開業するにあたって一番悩んだのが開業資金でした。
お店の開業にあたり、当時お世話になっていた税理士に「今後の展開として、お金をかけずに低価格でケータリングのアトリエを作るか、お金はかかるがお店を開業するべきか悩んでいる」と相談したそうです。相談前は、「きっと現実的ではないから開業は無理だと言われるのではないか」と覚悟をしていたそうですが、税理士からの助言は意外な返答でした。
税理士からの回答はとてもシンプルで、「やりたい方をやりなさい」と言われました。意外な返答にあゆみさんは、「お金を管理する職種の人がなぜやりたい方を優先させるのか?」疑問に思い税理士に尋ねたところ、「やりたい仕事は続くから」と言われたそうです。
この時あゆみさんは「仕事や物事を考えるときにお金を優先して考えるのを辞めよう」と思ったと語りました。
この考えに至った際にあゆみさんは、世の中の人々の働き方に対する「違和感」に気づきました。今の世の中では「お金のために働く」というのをベースに仕事をしている人がほとんどで、続けるモチベーションが無い仕事をやっている人が多いのではないかと思ったそうです。これまであゆみさんは、お金の心配や周りの目を気にしながら、がむしゃらに働いてきた結果、長く続けることは難しかったと言います。もちろんお金も大事ですが、続けられることや、興味がある事を見つけるのが結果的に仕事を続けて稼ぐコツとアドバイスしてくださいました。
その後あゆみさんは、出張食堂として諏訪に度々訪れることになります。そこで知人・友人の紹介で出会った農家や地元の人々と交流していく中で、自然に近く食材も豊富で、日々移り変わる野菜の変化を感じながら料理ができそうな環境に惹かれ、諏訪で現在も多くの人に愛される“あゆみ食堂”を開業しました。開業資金調達のため、クラウドファンディングにも挑戦したそうですが、あゆみさんの開業に対するこれまでの経緯や想いを伝えたところ目標の倍以上の支援が得られ開業に至ったそうです。
今後はチームで美味しい料理を届けたい
現在“あゆみ食堂”は週4日営業、メニューはワンプレートのみというスタイルで営業しています。この営業スタイルにもあゆみさんのこだわりが関係しています。
週に4日営業というと、「休みすぎなのでは?」という意見もあるようですが、3日間の休みには理由があります。3日のお休みの内、2日間は食材の調達・仕込みを行い、残りの1日は自分の休暇としてしっかり休むことを心掛けているそうです。
ワンプレートのみのメニューに絞っているのにもあゆみさんの思いが込められています。「数種類のメニューの中から選べるお店か、ワンプレートだけのお店か、それは各お店の個性でありお客様にとってお店を決める選択肢の一つ。ワンプレートにお客様に食べてもらいたい料理を詰め込んで提供するのが“あゆみ食堂”の強みであり、それを楽しみにしてくれるお客様に料理を提供したい」と力強く語ってくださいました。
数々の「違和感」からたどり着いた現在の“あゆみ食堂”ですが、オープンして今年で4年を迎え、今では地元だけでなく遠方の方からも愛される大人気食堂として知られています。
そんな「“あゆみ食堂”の今後の展望は?」と聞かれたところ、「今後はチームを作って、自分が居なくても“あゆみ食堂”の営業が出来るよう人材を育成していきたい。そしてゆくゆくは、“あゆみ食堂”を営業する傍ら、またケータリングの仕事をして沢山の方に自分の美味しいと思う料理を届けていきたい」と笑顔で答えてくださいました。
あゆみさんの考え方、その考えに至るまでの過程に共感される方や背中を押された方も多く、終始うなずきながらメモを取られている参加者の姿が印象的な会となりました。
参加者のコメント(一部抜粋)
・日々の中の違和感を見過ごさない生き方が今を生きることに繋がっていると思い、大切なことに気づきました
・自分が思っていた悩みや人生観、同じ直感型で学びはもちろん、同感の部分がほとんどでした。あゆみさん自身が自分を大切にすること、お客さん、食材を大切にされていることがとても伝わりました。
・今までずっとポジティブな方向ばかり追っていこうとしていましたが、違和感をつぶすことで大事なこともあるんだなと思いました。(一見地味ですが嫌だと思う事をしないって重要)
左:ゲスト 大塩あゆみさん 右:企画・コーディネーター 牛山直美さん
今後もmeet up Labでは、話題の事業や活動の舞台裏を掘り起こしながら、ご自身の活動やビジネスに役立つヒントを探し出せるビジネスネットワーキングイベントとして、継続してまいります。
次回をお楽しみに。