後編 壁を乗り越えて、やり続けるために〜茅野発ローカルビジネスの可能性イベントレポート 

9月20日(金)に開催されたスペシャルmeet up Lab「茅野発ローカルビジネスの可能性ーわたしらしさ、地域らしさを考える」のレポートを、3回に分けて掲載します。

前編 「地域らしさ」とは?
中編 「ローカルビジネス」とは?
後編  壁を乗り越えて、やり続けるために

後編 壁を乗り越えて、やり続けるために

田子:みなさん自分と向き合って、自分を見つめて、その中でビジネスと向き合っているんだということがよくわかりました。

会場から、ご質問ありますか?

参加者:何かことを始める上では、障壁に当たったご経験、それをどう乗り越えたのか、苦労されたところをお聞かせください。

田子:私のおすすめは、山越さんのやり方です。山越さんいかがですか?

山越:私の場合、みなさんからよくぞ頑張って建てたと言われることが多いですが、自分としては淡々としていて、諦めなかったというより、やめなかったという感じの気持ちです。

もちろん挫けそうになったり、潮時かなと思うことはいくつかありました。でも、まあやめなくてもいいかな、と。障壁にぶつかって乗り越えるのには勇気もいるし、大変だと思うのですが、やめずにゆっくりと続ける。いつかやれるかなと思い続ける、というのも一つのやり方なのかなと思います。

田子:山越さんは、自分一人で叶えないで、クラウドファンディングをして、自分の夢をみんなの夢にして叶えた。それで、宿を開くために内装、お花、食器、香りなども、全国のたくさんのプロの方々にお願いしています。

山越:計画が長くなれば、素晴らしい方々との繋がりがたくさんできるじゃないですか。それを今回の宿を建てるにあたって、みなさまにお声がけしました。

長く続ける中で、私は、こういう思いを持っていて、こういう夢があるんだって、みんなに言っていたので。実際に計画が進んでいくと、みんな「本当に建てるの?」とおもしろがって、力を貸してくださいました。

田子:自分で乗り越えるというより、こんな軽やかな山越さんの生き方が参考になるんじゃないかと思っています。

手前から田子直美、山越典子、土谷昭司、大塩あゆみ

齋藤:私から、軽やかにいかなかったパターンを(笑)。

私は2018年1月に会社を立ち上げましたが、「起業する上でこれはやらない方がいい」ということを大体網羅しました。

まず、共同経営者を作りましたが、よくなかった。共同代表制は大変でした。合意形成が取れない。結局責任を取るのは一人なんです。

もう一つ、出資者を募りました。でも、最初から金融機関にお願いすれば良かった。最初は、「若いあなたを応援するから」と言っていろんな人が出資してくれるわけです。そのうち「お金を払ったのにいうことを聞かない」と言い出しました。

一つ一つお話しすると時間がかかってしまいますが、自分でなんとかやるべきだと、いま、私は思っています。

参加者:今後、どのような展望を描いていますか? 地元しか知らない、自分の周りしか知らない、自分の会社のことしか知らない人たちとどのようにやっていくのでしょう。

田子:イベントで様々な方々と、また地域の方と一緒にやっている向井さんはいかがですか?

向井:私が移住して来た頃は、駅前に本当に何もありませんでした。逆に、何もないから文化を作りやすい、という単純な想いだけです。

そこに古着屋というコンテンツを入れたんですが、店を開くより先に、古着屋をどう作るかというのをYouTubeで実験的に上げました。

私含めて四人の若者がやろうとしていることに、一瞬にして千人ほどがチャンネル登録してくれました。見てくれた人たちは、何か刺激が欲しかったんだと思います。それから、千円、二千円という単位でなく、1万円の価格帯が成り立つ空間と品物を提供しました。

古着屋は、リサイクルショップやフリーマーケットとは違います。価値の提供は、地域に合わせるんじゃなく、業態に倣うことが重要だと思います。

今日、ここには、自分なりに身なりに気をつけて来ました。すると、同じような感覚を持った人と繋がっていきますよ。特に共有意識がなくても、自然と行われていくと思うんです。

そして、蔵市というイベントは、茅野市で蔵をお持ちの方々のところに、私たちで蔵を片付けますよとお邪魔して、その中の不用品を全て回収してイベントで販売するんです。

地元の方々は、北山が蔵の多いところだとみなさんご存知なので、「蔵市は北山で開催したらいいよ」とよくおっしゃいます。ある意味、期待していただけるようになったのですが、一方で、地元にいると、蔵の中にあるものが有意義なコンテンツになるとわからない。誰も思っていませんでした。

地元に認められて、まず、一つの土台ができます。でも、認められるコンテンツは、外部からの視点、外部の情報を用いた方がいいと、経験から感じています。

地元の産業を使って地元の方に認めてもらうとなると、閉鎖的な空間を作り上げてしまうことになるんじゃないかと思っています。外部が参入しやすいきっかけづくりを、様々なところで行っていこう。そうすればいろんなものが生まれてくると思って活動しています。

向井啓祐(右)、宮木慧美(左)

田子:地域の魅力の再発見みたいなことを地元の方にお伝えする。お願いベースで行った方が地域に入りやすくなるのかな、と思いました。

事前にいただいた質問に、「知名度アップ、サービスを知ってもらう方法や考え方を教えてください」とあります。小泉さんいかがですか?

小泉:ユーチューブ、インスタグラム、エックス(旧ツイッター)、ティックトックさまざまなSNS媒体があります。インスタグラムは、ストーリーズで動画を発信したり、インスタライブという生配信もできて、色々な発信方法があります。

認知を広げるにはSNSは必須だと思いますし、やったほうがいいことはすごくたくさんある。逆に、ネガティブな発信、批判は絶対しちゃいけないというのは、常識的にわかると思います。

お店の良さもそうですが、働いている方の思いや気持ちも一緒に載せていくと見られます。商品の良さを伝えるより、私は「大変だった」「辛かった」という裏側も出していったんです。

SNSの使い方というのは、良さを見せたくなるんですが、裏側を人は知りたがっている。女性のターゲットはなおさらかもしれません。アクセサリーは全然関係なく「こう思うことあるよね」という投げかけ、私自身の思いをSNSに載せて発信していく。そうすると、私が発信しているから買いたい、行きたいという状況になるんだと感じています。

参加者:発信がブレないために大事にしていることはありますか?

小泉:3ヶ月くらい発信を頑張っていると、必ずアンチコメントを入れてくる人が出てきます。それを前提に取り組んだ方がいいです。

私も発信するのが怖かったり、インスタを見るのも辛い時期がありましたが、アンチコメントや意見は、自分にとって大事なメッセージであり、改善すべきところに気づくこともあります。

こうやってしっかりと自分と向き合うことになるので、SNSは、すごくメンタルが強くなります。ビジネスを起こしていく上では、本当に諦めない覚悟がかなり必要で、SNS発信もそういった気持ちでやるといいと思います。

田子:最後に、この地域で自分らしく、続けていくためのヒントやポイントを一言ずついただけますか?

山越:ローカルという点で一番大切にしていることは、ご近所付き合いに尽きると思います。小さな狭いところで始めたビジネスなので、自分はこういう人間だということ。そして、周りにどんな人がいるかということを、コミュニケーションをとりながら日々関係を築いていくことが一番大事なのかなと思っています。

今日はみなさんの貴重な意見、共感できる部分がたくさんあり、とても面白かったです。

土谷:私は、今年どうやって乗り切ろうかということで頭が一杯で、地域や自分らしさについて、大それたことを発言できる状態ではないのですが…。

大塩:あまり人に合わせずに、自分らしくやるということをすごく大事にしています。

これからもこんな感じでやりつつ、お客様は「こういうことをしたら嬉しい」と感じるんじゃないかなと、自分なりに解釈して形にしていくことを続けていけたらいいなと思っています。

齋藤:個人的な意見を申し上げると、山越さんのお話に非常に近いものです。

地域で何かをしようと思うのであれば、それを願うのであれば、それは地域で骨を埋める覚悟でやらなきゃものにならないと思っています。

最近は、「ノマドワーカー」や「多拠点居住」などの言葉が多く使われますが、起業の場合は、いいとこ取りの暮らしなんていうものはない、と思っています。私も2020年に結婚を機に本籍地を上田市から茅野市に移しまして、今、完全に茅野市に納税する身です。

齋藤由馬

橋本:私は、人事コンサルタントとしてセミナーや講演をしていますが、人事経験と採用担当の経験はゼロです。やりたいことに対して経験がなくてもこうやってご飯を食べていけるということを、私自身が証明できたと思っています。みなさんやってみたいことは、ぜひ、チャレンジしていただくのがいいと思います。

やりたいという気持ちが一番大事で、それを多くの人は無理じゃないかとネガティブなことを言います。人は、変化に対する恐れがあります。本当に好きだと思うことをちょっとでも勉強してみる。ちょっとでもやってみる、ということが「私らしさ」だと思っています。

また、地域らしさについて、本当に人と人とのつながりが大事です。向井さんの言う通り、何もないからできることはたくさんあると思っています。

東京では当たり前だが、この地域にないものが結構ある。競合他社が少ないという点も大きいと考えています。

小泉: 時代はものすごいスピードで変化しています。

チャレンジして、何かわからないことがあったらネットで検索してどんどん調べていく。自分のオリジナルなビジネスのやり方を見つけていくということが必要になっていくんじゃないかと思っています。

SNSでは色々な情報がどんどん流れてきますが、自分たちがどの情報をキャッチしたらいいのか、それを見極めていかなくちゃいけない時代になってくるんですよね。自分自身を知って、 自分がやりたいことをちゃんと決めて、しっかり情報をキャッチしていけるようになっていっていきたいと思います。

武居:店をオープンしてから8年経ち、途中でやめようかなって思った時が何度もありました。今でも課題や問題が山積みです。そうした時に大事なのは、「なんとかなる」と思うことです。なんとかなって今、ここに来ているんです。

人間追い込まれた時は、だんだん視野も狭くなってしまうんです。

そういう時についため息をついてしまいますが、そうではなくて大きく深呼吸する。脳に酸素を送って、落ち着いて考えてみることが大事だと思います。追い込まれて冷静な判断ができなくなった時こそ深呼吸、ぜひやってもらえたらと思います。

いま、バームクーヘンのお店で「ファイナルクーヘン総選挙2024秋・冬」に参加しています。グルテンフリー党にエントリーしていますので、ぜひ、投票してください。(https://www.baumkuchenexpo.jp/topic/3955

左から橋本芳裕、小泉恭子、武居章彦、宮木慧美

宮木:みなさんの話を聞いて、表情をみて、この場に高校生を呼びたいと思いました。

一人一人が、自分らしさや自分の価値観を大事にして生きていくことは素敵だなと、改めて感じた時間でした。

向井:私は、人からよく「向井さん、忙しそうですね」と言われます。でも、私自身は人前で絶対に「忙しい」という言葉を言わないようにしています。家族にも言いません。

忙しいのは感覚で仕事をするからだと思っています。そこで、私は、毎朝起きると、今日24時間何をするかを決めます。ここに移住してきてからずっとやり続けています。それがすごいことだとは思っていませんが、こういうマインドで仕事をやっていくことが、自分らしさや地域課題の解決につながるのかなあと思っています。

田子:今日は、地域課題の解決、仕事の障壁を乗り越えるヒント、今後の地域や自分の生き方のヒントになる話をたくさん聞くことができました。

ゲストの方々も参加者のみなさんも、それぞれ感じたことを持ち帰って、お仕事や毎日の自分の暮らしに活かしてもらえたら嬉しいです。

本当にありがとうございました。

前編「地域らしさ」とは?

中編「ローカルビジネス」とは?

オープンワークラボ スペシャルmeet up Lab
“茅野発”ローカルビジネスの可能性ーわたしらしさ、地域らしさを考える
日時:2024年9月20日(金)18:00-20:00
会場:ワークラボ八ヶ岳
主催:ワークラボ八ヶ岳(一般社団法人まちライブラリー)
後援:茅野市
https://wly.jp/topics/920meetuplab/