7/12(水)meet up Lab Vol.2のゲストは、2023年4月30日に開催された「蔵市」の仕掛け人であり、古着屋LAGOMの代表でもある向井 啓祐さんにお越しいただきました。
幼い頃から培われた観察力を駆使して、アパレルショップでは最高の接客をし、次々と店舗の立て直しを行ってきた向井さん。2022年から諏訪市に移住し、古着屋LAGOMをオープン、2023年4月30日には茅野駅周辺を舞台に「蔵市」という一大イベントを成し遂げました。そんな向井さんのアパレル業界で培ったビジネステクニックや、茅野を盛り上げていきたいという熱い想い、「蔵市」を通した様々な挑戦についてたっぷり語っていただきました。
アパレル業界時代に確立した向井さん流の立て直し術
ファッションに目がなく、服の勉強を本気でしたいと強く思い、専門学校を卒業後ベイクルーズ社へ入社、JOURNALSTANDARDにて10年アパレル業に従事した向井さん。そこでは接客を中心に、売れないお店に派遣されては立て直しを行うという数々の業績を上げてきたそうです。
そんな向井さんの立て直し術の3つの軸に関して、今回特別に語っていただきました。
①人の軸の修正
現場で働くスタッフのモチベーションがお店の雰囲気に繋がるため、スタッフのマネジメントに熱を注いだそうです。スタッフがどうやったら楽しく働けるか、その考え方に感化されたスタッフは少なくないのではないでしょうか。
②物の軸の修正
商品の配置やプロモーション、打ち出し方の工夫を大事にしていました。一個の商品に焦点を当てて、これを売りたい!と思ったら周りに余計な物は配置しない、特別感の演出など常に工夫していたそうです。
③事の修正
服を買いたいという思いにどのように寄り添うのか、購入に繋げるためにはどのような工夫が必要かと考えた向井さん。服を売る、だけではなくイベントを企画し何か面白そうなことをやっている、という興味から店舗を認知してもらい、購入に繋げることに成功していったそうです。
向井さんの人を惹きつけるポイントがぐっと詰まったトークに、頷きながらメモを走らせる方や写真を撮影する人も多く見受けられました。
なぜ茅野に舞台を移したのか
アパレル業界では多くの実績を残してきたのにも関わらず、茅野に舞台を移した向井さん。なぜ前職を手放して、“茅野”という土地を選んだのでしょうか。
前職を離れるきっかけになったのは、向井さんならではの考え方にありました。
日々、接客をしているうちに向井さんの中である疑問が生まれました。「目の前にいるお客様がに本当に買いたいと思っているか?」、「ただ上から売れと言われた商品を売っているだけなのでは」ということに疑問を抱き始めたそうです。このまま続けていいのか、お客様の欲しいに寄り添っているのかと考えていた時に、現在の合同会社HISOCAのメンバーに「登山のお店を出したいから、茅野駅の現状を変えてくれないか」と、声をかけてもらい、諏訪へ移住することを決意しました。
移住後古着屋LAGOMの開業、そして「蔵市」へ
「アパレル業界での経験や知識を活かして、まちを盛り上げることができるのか」という観点から、向井さんの挑戦がスタートしました。2022年5月に、伊那でリメイクした古着を用いたファッションショーを開催。同年7月には塩尻にて、長野県内の古着屋が集まる一大イベント「MIMIY USED MARKET Vol.2」参加、8月には茅野に古着屋「LAGOM」をオープンするなどアクティブに活動してきました。
これらの経験から向井さんが辿り着いた、「昔のモノを今の人が手に取る、昔と今を訴求する」というテーマが後の「蔵市」開催へと繋がっていきます。
第一回「蔵市」の幕開け
「茅野駅に新しい文化を創る為」古着屋LAGOMを立ち上げた向井さんですが、一つの疑問がありました。「茅野で盛り上がっている観光、山に行くのにその玄関口である茅野駅が過疎っているって不思議。」そう思った向井さんは、茅野駅周辺で大きなイベントを開催できないかと考え、蔵から回収したものを次の世代にというコンセプトの元、昔と今を繋げるイベント「蔵市」を立ち上げます。
「蔵市」という大きなイベントを開催するにあたり、一番の課題となったのが周辺店舗への協力依頼でした。茅野を盛り上げるためのイベントを開催する旨を伝えても、「単発のイベントでしかない。」や「経済効果はないのではないか。」など厳しい意見も多くいただいたそうです。
しかし、向井さんは挨拶回りの中でただ説得するのではなく課題を聞き出し、その課題に寄り添ったプレゼンを行い、「必ず経済効果を生み出しますのでお店の紹介をさせてください。」と頭を下げ続けました。
その結果、無事地域店舗への協力も得て「蔵市」開催当日は来場者約1000名以上トータルで100万円以上の売上を成し遂げました。
(実際の蔵市当日の様子)
「茅野にこんなに若者がいたなんて」と地域店舗の方々もとても驚いていたようです。
そんな第一回の「蔵市」の詳しいイベントの様子はこちらからご覧いただけます。https://wly.jp/topics/0430/
第二回「蔵市」の戦略
第一回「蔵市」を通して、様々な課題もあったそうです。そこで9月9日(土)・10日(日)に開催を予定している第二回「蔵市」に向けて向井さん流の課題へのアプローチについて伺いました。
①飲食ブースの増設
”商店街を歩いてもらう”ということを目的とし、今回は様々なラインナップのキッチンカーを各所に配置予定。飲食ブースを増やすことで、滞在時間を延ばし色んな場所へ足を運ぶきっかけに繋げる。
②ファミリー層に向けた施策
第一回はファミリー層の来客も多かったため、今回は子供達が遊べるスペースやワークショップ会場を設けたり、子供たちにも需要がある商品を販売したりするなどファミリー層にもアプローチしたエリアを展開。
③蔵回収品の販売方法や打ち出し方法を変更
ベルビア1階に位置する、元飲食店だった空きスペースを活用しオークションを開催。ステージがあるので、エンターテインメント性やイベント感を演出しオークションを盛り上げる。
マップを用いて、次回「蔵市」の各エリアの見どころを語ってくださいました。
「蔵市」を通した今後の展望
「蔵市」の一番の開催目的として、茅野駅周辺の活性化と強く語っていた向井さんですが、向井さんの考える活性化とは何か今後の「蔵市」の展望を伺いました。
向井さんの考える活性化とは
①地域店舗の活性化
イベントで知ったお店に、平日でも利用客が増えること。「蔵市」当日の実績だけでなく持続性を大事にする。
②空き家の活用
空き家や空きスペースでイベントを開催することで、どういう場所かわからない人にその場所を認知してもらうことや、空き家情報の共有から新規事業者へアプローチする。
③駐車場の活用
現在はベルビアが主要の駐車場エリアとなっているが、「蔵市」を通して連携した駐車場を認知してもらい、商店街へのアクセス対応の幅を拡げる。
④店舗間で連携したイベント
日常的に店舗間でのイベントを開催し連携を図ることで活性化させる。
例)ホテルに泊まった人がLAGOMのクーポンを使えるなど。
近隣店舗への利用目的をつくる。
参加者から「蔵市の今後のビジョンは?」と尋ねられたところ、「3年後には蔵市を日本全国から茅野に人が集まるイベントにしたい。日本全国の蔵から回収したものを茅野に集め、茅野でしか買えないようにする。そうすることで、蔵市を日本人の古物への価値を上げていく一大イベントにしていきたい」と今後の熱い展望を語ってくださいました。
質問タイムでは、若者の集め方や企画・アイディアの出し方、SNS広告の打ち出し方など様々な角度から多くの質問が飛び交っておりました。
聞いている人の心を掴む向井さんならではのトークテクニックで終始熱く応えている姿が印象的でした。
参加者からのコメント(一部抜粋)
・向井さんの茅野に対する情熱が蔵市に対する思いの強さを強く感じることができました。また、蔵市を開催するにあたっての様々な準備やコミュニケーションの構築など、人とのつながりを重視されていることが魅力的な部分だと感じました。9月に開催される蔵市も楽しみにしています。
・若いエネルギーのある方が、茅野市を活性化しようとしていることを初めて知りました。これからその熱意をもって、学生などの若い世代を引っ張っていただけることを期待しています。
左:ゲスト 向井啓祐さん 右:企画・コーディネーター 牛山直美さん
今後もmeet up Labでは、話題の事業や活動の舞台裏を掘り起こしながら、ご自身の活動やビジネスに役立つヒントを探し出せるビジネスネットワーキングイベントとして、継続してまいります。
次回をお楽しみに。